兵庫県立こども病院 外科、佐藤志以樹、他

症例:生後6カ月の男児。在胎42週、3444gで出生し、生直後から腹部膨満と胆汁性
嘔吐を認めた。腸炎による全身状態の悪化をきたし、Hirschsprung病の診断で手術を
行った。開腹すると、下行結腸下端にcaliber changeを有するHirschsprung病で、神
経節細胞を確認した下行結腸上端に人工肛門を造設した。術後、人工肛門から300-50
0mlの腸液排出が長期間持続し、同時に血液の混じったフィブリン塊がみられた。経
過中にエンドトキシン血症のため2回の交換輸血を要したが、腸炎に伴う腸粘膜の脱
落とそれに伴う粘膜のbarrierの破綻が原因と考えられた。腸液の排出が減少するの
を待ち、術後1カ月目から少量ずつEDPで経口を開始し、現在アイソカル40mlとラクト
レス50ml混合が6回/日までtolerableとなった。この間、原因不明の腸炎を2回おこし
ており、NPOとなっている。生直後から虹彩異色症を合併していたため、患児のHirsc
hsprung病は、neural crest diseaseの範疇に属するものと理解された。わからん点
として、以下の2つを質問した。1)排便良好な人工肛門を有しても頻回の腸炎を発症
する理由が不明で、neural crest diseaseの関連性から説明できるものかどうか。2
)広範な腸粘膜脱落に対する治療法-とくに、腸管粘膜再生を促す方法はあるのか。