1.発赤、圧痛及び熱感を伴わない、繰り返す皮下膿瘍を呈する症例
兵庫医科大学 第一外科
澤井利夫、飯干泰彦、関 保二、藤元治朗
 3歳女児。3ヵ月前より右耳介後部及び右側頸部に小さな腫瘤が出現した。増大してきたため近医受診するも増悪するため等科紹介となった。各々3cm大、5cm大の腫瘤であり、下顎部及び左側頸部にも1cm大の腫瘤を認めた。発赤、圧痛及び発熱を伴わない腫瘤であったが、波動を蝕知したため、皮下腫瘍と診断し切開排膿した。入院後抗生剤の点滴にて軽快した。頭部から顔面にかけて多数の膿化疹と掻き傷を認めた。原因菌はMRSAであった。副鼻腔炎も認めた。血液検査上白血球数12700/mm3、分画異常なくCRP0.7mg/dlであった。1年前にも同様のエピソードがあり、切開排膿を受けている。乳児期には気管支炎で入院加療の既往がある。以上の経過より免疫不全を考えた。IgE14000IU/mlと高値で、好中球の貪食能及び殺菌能は正常であった。抗ブドウ球菌特異抗体が高値であり、臨床所見と併せて高IgE症候群と診断された。現在、ST合剤内服にて皮疹も軽快し膿瘍の再発もなく外来通院中である。