11.虫垂炎術後5年目に出現した左下腹部腫瘤
姫路赤十字病院 小児外科
岡本光正、安福正男
 15歳男児。左下腹部痛が持続し7日目に受診した(CRP4.1)。腹部US、CTで左下腹部に大網と連続した、一部石灰化を伴う内部不均一な5cm大の充実性腫瘤像を認めた。10歳時に穿孔性虫垂炎、回盲部膿瘍にて回盲部切除術を施行しておりその関連を疑ったが、抗生剤内服により腹部症状は消退した。腹部USでも腫瘤の縮小を認めたので経過観察することとした。2ヵ月後腹痛が再発するも(CRP9.87)、抗生剤点滴により10日間で軽快した。3ヵ月後イレウスを発症したが、翌日には軽快し5日間入院した。その間、腹部USで腫瘤は縮小傾向を呈しており6ヵ月後には1.5cm大に縮小した。しかし7ヵ月後に再びイレウスを発症した。腹部USで腫瘤は長さ3cmの管状構造物で小腸と連続することが判明した。99mTc-pertechnetate scanにて集積は認められなかったが、メッケル憩室を疑い手術を施行した。術後経過は良好で6日目に退院した。摘出標本は現在病理組織診断中である。

<二次抄録>
 15歳男児。左下腹部痛が持続しUSで左下腹部に大網と連続した、一部石灰化を伴う内部不均一な5.5cm大の腫瘤を認めた。10歳時に穿孔性虫垂炎、回盲部膿瘍で回盲部切除術を受けた。その関連を疑ったが抗生剤内服で軽快し、USで縮小傾向を認めたため経過観察を続けた。2ヵ月後腹痛が再発したが抗生剤点滴で軽快した。3ヵ月後イレウスを発症したが5日間入院し軽快した。6ヵ月後腫瘤は、USで1.5cm大に縮小したが7ヵ月後イレウスを再発した。USで腫瘤は長さ3_の管状構造物で小腸との連続が判明した。99mTcシンチで集積は認められなかったが、メッケル憩室を疑い手術を施行し術後6日目に退院した。診断は結紮糸によるBraun腫瘤であった。腫瘤出現になぜ術後5年を要したのか、抗生剤により治癒できるのかについて検討したい。