6.腹腔内水腫を伴った陰嚢水腫の2例
(症例1)1歳7ヵ月男児。生後2ヵ月より右陰嚢水腫が膨隆した。1歳時USで5×5cm大の腹腔内水腫が鼠径管を介して陰嚢水腫と連続していた。経鼠径的に手術したが腹膜鞘状突起は同定できず腹腔内水腫と精索水腫を切除して終了した。術後2.5ヵ月にUSで腹腔内に7×3cm大の水腫を認めた。術後3.5ヵ月に腹腔鏡補助下に再手術した。経鼠径的に精索を検したが腹膜鞘状突起は同定できず腹腔鏡で腹腔内を探索したが腹膜鞘状突起は確認できなかった。内鼠径輪から腹腔内に突出した水腫の内容を吸引し、鼠径管内に翻転させ切除し内鼠径輪を形成して終了した。(症例2)11ヵ月男児。6ヵ月時に陰嚢水腫と診断された。9ヵ月時に陰嚢を圧迫して水腫内容が腹腔内に移動した。11ヵ月時USで18×8mm大の腹腔内水腫が鼠径管を介して陰嚢水腫と連続していた。現在経過観察中である。
同様の形態をとるこの2症例の診断、治療及び成因などの疑問点を検討したい。
<<二次抄録>>異なる臨床経過をたどるAbdominoscrotal hydrocele(ASH)の2例
(症例1)11ヵ月男児。6ヵ月時に陰嚢水腫と診断され9ヵ月時に精索・陰嚢水腫が認められた。11ヵ月時USで2×1cm大の腹腔内水腫が鼠径管を介し陰嚢水腫と連続していた。ASHと診断し現在経過観察中である。(症例2)1歳7ヵ月男児。生後2ヵ月より右陰嚢が腫大した。1歳時USで5.5×4.5cm大の腹腔内水腫が鼠径管を介し陰嚢水腫と連続していた。1歳2ヵ月時ASHと診断し経鼠径的に手術したが腹膜鞘状突起は確認できず腹腔内水腫と精索水腫を切除して終了した。術後2.5ヵ月目にUSで7×4cm大の腹腔内水腫を認めた。術後3.5ヵ月目にASH再発と診断し腹腔鏡補助下に再手術した。鼠径部、腹腔内から腹膜鞘状突起は確認できなかった。内鼠径輪から腹腔内に突出した水腫内容を吸引し鼠径管内に翻転させ切除し伸展・開大した内鼠径輪を形成した。水腫は伸展した横筋筋膜による仮性嚢胞であった。再手術2ヵ月目で腹腔内水腫は認められないが陰嚢水腫が腫大傾向にある。