10)<小児外科日頃の疑問>遊走精巣はなぜ遊走するのか、どこへ遊走するのか?


日本小児泌尿器科学会の2005年の停留精巣診療ガイドラインには、遊走精巣は、陰嚢内から鼠径部までを容易に移動する精巣の状態である(東田)、と定義され、多くは精巣挙筋の収縮によって移動すると考えられている(東田)、とある。しかし、よく考えてみると、精巣挙筋がいかに収縮しても、精巣が精巣導帯で陰嚢底部にしっかり固定されおれば、精巣が鼠径部まで挙上することはないずである。同ガイドラインの別項には、精巣下降は完了しているが精巣挙筋の過剰反射と精巣導帯の陰嚢底部への固定不良が原因、とある(生野)。2歳の遊走精巣か停留精巣か異所性精巣か判断に迷う症例を呈示し、遊走精巣の病態、メカニズムを考えたい。