2)出生後50日経過してから認められた黄疸・灰白色便
症例は男児で、在胎33週6日で経膣分娩にて出生。出生体重は1760g、Apgar score 8/9。出生後食道閉鎖、鎖肛、右腎無形成にて当科紹介。同日食道閉鎖根治術、胃瘻造設術、人工肛門造設術を施行した。術4日目に抜管し、術7日目よりミルク注入を開始した。吻合部造影でGERが高度であるため十二指腸チューブを挿入し経管栄養を持続した。
その後は順調に経過していたが、術50日目より便が灰白色となり、直接ビリルビン優位のビリルビン上昇を認めた。腹部超音波を施行すると胆嚢は同定可能であり、胆嚢内high echoic massを認めた。また肝内胆管拡張を軽度認めた。利胆剤など保存的療法を開始するとともに種々の検査を施行した。ビリルビン値は軽快せず、腹部超音波検査にて肝内胆管拡張の増悪を認めたため、保存的加療の限界と判断し、開腹手術を行った。
二次抄録:
症例は男児で、在胎33週6日で経膣分娩にて出生した。出生体重は1760g、Apgar score 8/9であった。出生後食道閉鎖、鎖肛、右腎無形成、左停留精巣にて当科紹介となり出生同日食道閉鎖根治術、胃瘻造設術、人工肛門造設術を施行した。術7日目に胃瘻よりミルク注入を開始した。上部消化管造影でGERが高度に認められたため十二指腸チューブでの経管栄養を続行した。
その後は順調に経過し体重増加も良好に見られていたが、術50日目より便が灰白色となり、直接ビリルビン優位のビリルビン上昇を認めた。腹部超音波検査を施行すると胆嚢は同定可能であり、胆嚢内にdebris 様のhigh echoic massを認めた。また肝内胆管拡張を軽度認めた。腹部造影CTでも同様の所見を得て、肝胆道シンチグラフィーでは胆管排泄は極めて不良であると考えられた。ウルソ・硫酸マグネシウム投与による保存的療法を開始するが、ビリルビン値は改善せず、腹部超音波検査にて肝内胆管の拡張の増悪を認めた。体重増加も不良であり、保存的加療の限界と判断し、開腹手術を行った。開腹所見では肝臓は全体的に腫大し、胆嚢の萎縮は認めず、内部に微細な胆砂を認めた。生食で頻回に胆管を洗浄し、物理的に胆砂を摘出した。術中胆道造影では軽度肝内胆管の拡張を認めたが、十二指腸への造影剤の流出は良好であった。摘出した胆砂の結石分析を施行したところ、95%以上がタンパク成分であった。病理組織学的所見では細胆管の増生と炎症細胞の浸潤、胆汁うっ滞を認めた。術後より黄色顆粒便の排出が見られ、ビリルビン値は一度低下を示したが、再度上昇傾向を示し直接ビリルビン2mg/dl前後で推移した。これに対して、ステロイドパルス療法(5mg/日×3日間)を施行すると、ビリルビンの低下を速やかに認めた。日齢141日目に退院し、現在ビリルビンの再上昇を認めることなく外来通院中である。
病態としては、胆汁うっ滞による黄疸・灰白色便を示したと考えられる。この胆汁うっ滞は新生児期ではなく乳児期早期に出現した事、また画像所見からは胆嚢内にdebrisを認めた事と、術中所見・病理所見からも胆汁栓症候群を示唆すると考えられた。外科的に胆管洗浄を施行することによりビリルビン値の改善を得られたが、その低下が緩除であり、ステロイドパルス療法を施行することにより速やかにビリルビン値の正常化を得た。