奈良県立医科大学第一外科 兵庫医科大学第一外科*
金廣裕道,楯川幸弘,鹿子木英毅,中野博重,豊坂昭弘*

症例は平成9年10月26日、運動部の練習後帰宅し夕食を摂取した。食後2時間より突然
の腹痛と嘔吐が出現し、翌日早朝当院受診。腹部X腺写真では麻痺性小腸ガスを多量に
認め、CTでも拡張腸管と腹水の貯留がみられた。入院後も腹痛は軽快せず,CRPの上昇
、明らかな血便が出現したため、腸管循環障害(腸重積、腸捻転)を疑い開腹した。開
腹所見では小腸壁の著明な発赤と浮腫、腸間膜静脈の小血栓様変化が多数観られたが、
色調は回復したので生検のみにて閉腹した。術後経過は順調であった。小腸生検組織像
では、鬱血浮腫と微小静脈血栓が認められた。本例は腸管切除不要であった腸間膜静脈
血栓症と推察したが、病因、診断、治療ついて疑問点が残るため症例提示した。