画像上嚢胞性の性格を示した充実性肝腫瘍の1例

大阪大学小児外科、放射線科*
草深竹志、黒田征加、タスニム アラ、田附裕子、鎌田振吉、岡田 正、高橋 哲*

 症例は10ヶ月男児。6ヶ月検診にて腹部腫瘤を指摘され、他院にて肝嚢胞と診断され
当科紹介受診した。全身状態は良好であり、AFPなど各種腫瘍マーカーを含め、一般検
査上異常を認めなかった。超音波、CT、MRI検査では、径8cm大の腫瘍を肝右葉下部
に認め、その性状は隔壁を有する多発性の嚢胞性所見を主としており、術前診断としは
肝間葉性過誤腫の可能性が高いと考えた。手術ではS5,S6区域切除にて腫瘍全摘したが
、腫瘍は術前画像所見とは異なり、充実性で標本割面で嚢胞部位は認めず全体にほぼ乳
白色で光沢があった。しかし、割面作成時数分すると割面からfluidがにじみ出ているの
が観察され、腫瘍自体は水分に富んでいた事が示唆された。病理組織では細胞密度の低
い線維芽様細胞でほぼ一様に構成されており、肝間葉性過誤腫に特徴的な間質内の胆管
構造はみられなかった。組織学的にもいまだ診断は確定していない。