10才児の腹腔内嚢腫;いろいろありました
大阪府立母子保健総合医療センター小児外科
八木 誠,井村賢治,米田光宏,北山保博,木村拓也,大谷まり
10才男児の腹腔内嚢腫の一例を報告する。患児は急性腹症の形で発症,入院時の血液検
査所見では白血球の増加,CRPの著明な上昇を認めた。超音波・CT・MRIの各画像診断
では肝下面,胃,横行結腸に囲まれた部位に巨大な嚢腫性病変を認めた。抗生剤投与に
より炎症所見の軽快と嚢腫の縮小を認め,大網または横行結腸間膜のリンパ管腫の術前
診断で腹腔鏡手術を施行した。手術では腫瘤壁は比較的厚く,周囲の大網・腸間膜に癒
着しており,laparosonic coagulating shears (LCS)を用いて周囲組織との切離・剥
離を行った。しかし腫瘤は底部で膵頭部で強く癒着していたため,小切開で開腹し,底
部を剥離後切除した。術後1日目より嘔吐,CRPの上昇がみられ,翌日再開腹術を施行
した。その結果,横行結腸に穿孔を認め,LCSが原因ではないかと推察した。LCSは熱
損傷が少ないことが一つの利点とされているが,5mm径のLCSは熱放散が10mmのもの
に比して悪い。腹腔鏡手術の時には注意が必要であると考えられた。また嚢腫は
mesenteric paniculitisと病理的に診断されている。