5歳時に発症した小腸hypoganglionosisの一例

大阪大学 小児外科、同 小児科* 
木村拓也、和佐勝史、井原欣幸、宇田津有子、曹 英樹、中島清一、大植孝治、虫明聡太郎*、岡田 正

後天性hypoganglionosis(以下、本症)の一例を経験したので報告する。症例は6歳、男児。5歳時に突然発疹を伴う高熱を認め、胆汁性嘔吐を伴うため受診。小腸造影にて回腸末端の狭窄が疑われた。肛門内圧検査では反射が認められなかったが、直腸粘膜生検でAcE陽性線維の増生は認められずHirschsprung病は否定的であった。原因検索のため試験腹腔鏡を行うと、回盲部から40cm口側の部位に小腸を上方より圧迫する索状物を認め切除した。術後、症状は改善せず長期間経口を試みたが寛解が得られず、開腹した。回盲部から口側約70cmの回腸が全体に浮腫状で蠕動運動を全く認めなかった。それより口側は蠕動が亢進していた。虫垂を切除後、回腸末端から約90cm口側までを切除し端々吻合とした。術中迅速にて回腸末端部ではganglion cell(以下ggc)を認めたが、口側回腸ではggcを認めなかった。術後の病理組織診断でもトライツ靱帯より80cmの小腸において正常なggcは一部にしか認めず本症の診断を得た。自験例は経過からみて何らかのウィルス感染がベースにあると考えられ現在その原因を検索中である。