3カ月男児,胆汁性嘔吐,腹腔内には嚢胞性病変;何を考えますか?
大阪府立母子保健総合医療センター小児外科 ○ 神山雅史、八木 誠、奥山宏臣、大植孝治、池上玲一
今回我々は、乳糜腹水を呈した中腸軸捻転の稀な一例を経験したので報告する。症例は、3ヶ月男児。主訴は胆汁性嘔吐。近医入院中のCT,
MRIにて腹腔内に径5cmを最大とする数個の嚢腫を認めたため、症状出現3日後に当科転院となった。入院時、体重7295g、WBC
5300/mm3、CRP 0.1mg/dlと炎症所見認めず。臍下部正中に径5cmの弾性軟の腫瘤を触知した。腹部超音波検査で、腹腔内嚢腫以外にWhirlpool
signを確認した。以上より腹腔内嚢腫による腸捻転と判断し、同日緊急手術を施行した。手術所見では、腹腔内に少量の乳糜腹水を認めた。また、腸回転異常症および反時計軸方向に360度の中腸軸捻転を認め、捻転部腸間膜に多数のリンパ嚢胞(最大径5cm)を認めた。尚、捻転腸管の血行障害は軽度の静脈鬱滞のみであった。中腸軸捻転による腸間膜リンパ嚢胞及び乳糜腹水と判断し、Ladd手術を施行した。