20才ダウン症に発症した体重減少を伴う上部消化管通過障害。その診断は?

大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学小児発達医学(小児外科学)講座
木村拓也、川原央好、神山雅史、鎌田振吉、岡田 正

症例は20才、女性で、主訴は嘔吐および体重減少である。既往歴にダウン症を有する。患者は14才頃から嘔吐を認めていたが、経過観察されていた。半年前から体重減少を認め、吐物も胃液様から胆汁性へと変化したため、十二指腸狭窄を疑われ紹介となった。腹部は平坦、軟で、腹部単純X線上、胃の拡張を認めるのみであった。上部消化管造影および内視鏡で十二指腸の第1部から第2部にかけて拡張した部位を認め、その先は著しく狭窄しており、椎体に一致してトゥーアンドフローを認めSMA症候群の合併も疑った。以上の所見から十二指腸膜様閉鎖と診断し開腹した。開腹すると十二指腸は薄い炎症性皮膜に包まれており、同部を開放すると、十二指腸第1部から第2部の前壁に十二指腸憩室を認めた。憩室を切除した後、SMA症候群に対し十二指腸受動術を追加した。憩室は大きさ約5cmで、異所性粘膜は認めなかったが、筋層を認めた。術後経過は良好で第27病日には退院となった。術後2ヶ月であるが術前の症状は消失し、外来にて経過観察中である。先天性と考えられる管外型の十二指腸憩室は非常に稀で、自験例を含め4例の報告を認めるのみである。部位は2例が第2部付近に位置し、2例が第1部に認められている。組織学的に筋層を認めたのは2例であった。