部分脾動脈塞栓術(PSE)後に難治性脾膿瘍を発症した1例
京都府立医科大学小児疾患研究施設外科
尾藤祐子、木下裕美、常盤和明、岩井直躬
胆道閉鎖症葛西手術後患児の脾機能亢進症に対する治療として時に部分脾動脈塞栓術(partial
splenic embolization; PSE)が選択されるが、その合併症の報告も散見される。今回我々はPSE施行後に偽膜性腸炎を発症し、その後Clostridium
difficile菌(以下CD菌)を起因菌とする脾膿瘍に至り治療に難渋した症例を経験した。症例は12歳女児。生後1ヶ月時胆道閉鎖症に対し葛西手術を施行し以後減黄良好、時に吐下血を認めた。12歳時脾機能亢進症に対しPSEを施行した(塞栓率80%)。3週間後spike
feverと腹痛、血便が出現し、便中CD抗原陽性で偽膜性腸炎と診断しVCM内服にて治療した。一旦発熱は収まったが再び10日後にspike
feverが出現し、脾膿瘍を疑い経皮ドレナージ術を施行した。穿刺液から便培養と同じCD菌が同定された。留置チューブからの洗浄による保存的治療で軽快しPSE後6ヶ月で退院した。PSE後のCD菌による脾膿瘍は稀である。PSE後合併症の一つとして若干の文献的考察を加えて報告する。