消化管血管腫症の1例−どうしたらいいでしょう?−
大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学専攻小児発達医学(小児外科学)講座
佐々木隆士、米田光宏、草深竹志、岡田正
同生体制御医学専攻分子制御内科学講座
筒井秀作
消化管血管腫症はしばしば治療に難渋する。症例は8歳女児。2歳時に背部の巨大血
管腫を摘出。4歳時には膝、足底部の小血管腫を切除した。今回全身倦怠、動悸、頻脈に
て緊急入院。血中Hb4.4mg/dl、Ht値18%と著明な貧血を認めた。消化管造影検査及び内
視鏡検査により全消化管にわたって1cm前後のポリープ様血管腫の集簇が認められ、高
度の貧血はこれらからの出血が原因と考えられた。本症例に対し、経口鉄剤を投与し
つつインターフェロンα2aを1年間投与するも明らかな治療効果は認められなかった。
そこで我々は内視鏡的治療としてアルゴンプラズマ凝固(APC)法を適用し、これまで
に約200ヶ所の血管腫を焼灼したが特に合併症もなく、6週間後の内視鏡では焼灼した
血管腫は消失している。このようにAPC法は安全で確実に消化管血管腫を治療できるこ
とがわかった。しかしながら、(再発・再燃を含む)APC法の中長期的な治療効果、十
二指腸乳頭開口部近傍の血管腫に対する治療法、内視鏡の届かない小腸病変の検索
法・治療方針、などまだ"わからん"ことが多い。