右頚部血管腫:美容的適応に対する治療法

大阪市立大学 第2外科
大野耕一、諸冨嘉樹、木下博明
 患児は9カ月、女児。主訴は右頚部腫瘤。5カ月時に右頚部腫瘤に気づき、以後増大した。右頚部に正常皮膚で覆われた5cm大、球状の血管腫を認めた。圧排症状はなく、上肢の運動と発達、血液検査、循環動態にも異常がないため、経過観察したが消退しなかった。3歳4カ月時よりステロイド療法(プレドニゾロン2mg/kg/day×11日間経口投与、トリアムシノロンアセニド、40~60mg×6回局所注入)を行ったが効果はなかった。MRI検査で右鎖骨下動静脈と腕神経叢が腫瘍内を走行していると考えられたため、切除は困難と判断し、4歳9カ月時、腫瘍に流入する上行頚動脈の分枝、頚横動脈、胸肩峰動脈を塞栓した。しかし縮小せず腫瘍径は9cmに達した。生検したところ切離面から著しい出血がみられ、病理学的に脂肪組織を伴う海綿状血管腫と診断された。合併症がなく、美容的改善のみを目的とした症例に対して、今後どの様な治療法を選択すべきか苦慮している。