超低出生体重児の腹腔内出血―原因は、治療はどうすれば?−
和歌山県立医科大学第2外科1)、小児科2)
瀧藤克也1)、中森幹人1)、中谷佳弘1)、渡邉高士1)、奥谷貴弘2)、樋口隆造2)、山上裕機1)
肝被膜下出血の破裂により生後数時間に腹腔内出血を生じ、ショックとなった低出生体重児の2例を提示した。いずれの症例も急激に発症し、腹部超音波検査で腹腔内出血と診断できた。症例1は開腹止血術を施行したが、DICとなり死亡した。症例2は急激にアシドーシスが進行し、呼吸状態の改善を目的に腹腔ドレ?を挿入したが効果なく死亡した。出生直後の血液検査では頭蓋内出血がないにも関わらず、ヘモグロビン濃度が11.7および11.0
g/dlと低値で、出生時に既に肝被膜下出血が生じていたことが推察された。原因は分娩時の外力や仮死に伴う蘇生手技、アシドーシスに加えて血液凝固異常や血管の脆弱性が関与しているといわれている。この2例も骨盤位の帝王切開例であり、児娩出時の上腹部への外力が主たる原因と考えられた。低出生体重児に肝被膜下出血とその破裂により腹腔内出血が生じた場合は、高率に敗血症やDIC、頭蓋内出血を併発し、救命率は低い。いずれにせよ、輸血を含めた全身状態の改善と、早期手術が必要となるが、被膜下出血の状態で発見し、手術により血腫を吸引除去し、止血製材による圧迫止血術を行うことが有効な治療法となるかもしれない。