膵嚢胞を認めた9歳男児の一例

大阪大学小児外科
神山雅史 長谷川利路 佐々木隆士 木村拓也 澤井利夫 岡田 正

我々は膵嚢胞を認めその管理に難渋した9歳男児の症例を経験した。
症例は9歳男児。2001年8月心窩部痛出現。血中アミラーゼ高値にて近医入院。経過中、CTにて膵頭部に嚢胞を指摘された。保存的治療にもかかわらず、嚢胞が増大したため、1ヶ月後当科に転院。転院2日目に超音波ガイド下に経皮経胃的に嚢胞穿刺ドレナージを施行。ドレナージ後は、保存的治療にてアミラーゼ値は低下。原因検索のERCPでは、共通管の長さは9mmで合流異常症は否定的。その後ドレーンをクランプ。クランプ後CRPは陰性、アミラーゼ値も正常範囲内を推移。ドレーン刺入部よりの膵液の漏出を認めたが、排液量は食事開始にても変化せず、自然閉鎖目的にドレーン抜去。しかし、抜去後5日目に腹痛嘔吐出現し、アミラーゼ値再上昇、腹部CTにて膵頭部嚢胞の再発を認めた。再度保存的治療を選択し、症状消失、アミラーゼ値低下、画像上でも嚢胞の縮小を認め、転院115日目に軽快退院。
問題点としては、1.急性膵炎の原因は?2.全治療期間として約5ヶ月を要したが、初期治療および再発時の治療において保存的治療以外の選択はなかったか?以上について意見を承りたい。