小児肝腫瘍の緊急手術症例- 術前検査と手術方法 -
京都市立病院 小児外科 岩崎 稔
症例は1歳のDown症候群の女児で, 基礎疾患はなく, 腹部膨満, 貧血の進行を認め腹部超音波検査と腹部CTにて肝悪性腫瘍を疑うも,
腫瘍マーカー正常, 鼻腔, 咽頭, 血液培養は陰性で発熱をも認めなかったが, 白血球の増多,
CRPの上昇を認めた. 確定診断には至らず, 著明な腹部膨満と貧血の進行により肝悪性腫瘍の破裂を強く疑い,
深夜に緊急手術を施行した. 腫瘍は肝表面及び横行結腸にまで浸潤しており, 横行結腸切除ならびに肝右葉合併切除術を施行した.
摘出肝の割面より膿瘍を認め, 特発性肝膿瘍との診断に至った. 適切な術前診断の難しさと,
結果的には膿瘍腔ドレナージ術と抗生剤による治療法が第一選択であったかもしれないが,
腹腔内所見より横行結腸切除ならびに肝右葉合併切除を施行した術式につき, 多数のご意見,
ご指導を賜わるため今回の症例を呈示した.