左上腹部の多房性嚢胞性腫瘤
大阪市立総合医療センター小児外科、同病理部*
森内隆喜、中村哲郎、東 孝、中岡達雄、春本 研、中平公士、小林庸次*、井上 健*

症例は10才1ヶ月、女児。左季肋部痛を主訴に近医受診、CT、超音波で左上腹部嚢胞性腫瘤を指摘された。神経芽腫、褐色細胞腫等の副腎腫瘍を疑われ当科入院。腫瘤はMRI、上部消化管造影で胃粘膜下の多房性嚢胞性病変であることが判明、特にMRIで嚢胞内容は一部異なったintensityを示した。骨・胃粘膜シンチで異常なく、duplication cyst、lymphamgioma、teratomaを考え手術を施行。嚢胞は独立して3ヶ存在し、胃と平滑筋層を共有していた。病理組織で嚢胞壁は胃粘膜類似円柱上皮及び胎生期の食道粘膜類似多列繊毛円柱上皮で被覆されており、duplication of the stomachと診断した。多房性で小さな嚢胞で発見されることが稀な胃重複症であった。