2歳女児の急性腹症 -腹膜炎?-
神戸大学大学院医学系研究科 呼吸循環器外科学
久松千恵子、田中亜紀子、前田貢作、大北 裕

症例は2歳10ヶ月の女児。主訴は発熱と腹痛。既往歴・外傷歴は特になし。精査にて下腹部から小骨盤部に嚢胞状陰影あり、卵巣腫瘍の疑いにて当院紹介となった。腹部は板状硬で全体に圧痛・反跳痛あり、血液検査所見でも高度の炎症所見を認めたため、緊急試験開腹術を行った。下腹部横切開にて直接嚢胞内に到達、多量の膿汁が排出された。内性器の異常は認めず。左上腹部横切開を追加し、約5cmの横行結腸合併切除を行い、嚢胞を全摘出した。嚢胞は単胞性で13×8cmだった。術後経過は良好で、術後第10病日に退院。内容液の培養検査からはE.Coliが検出された。当初腸管と壁を共有しているように思われたため腸管重複症を考えたが、病理組織所見からは嚢胞の起源を決定することはできなかった。嚢胞壁と内層の病理組織所見からは感染性腸間膜嚢胞が最も考えられた。