開腹のタイミングに苦慮した意外なイレウスの1症例

兵庫医科大学第一外科
近藤祐一、飯干泰彦、澤井利夫、藤元治朗

症例は11才女児。腹痛、嘔吐を主訴に近医受診。腹部単純写真にてNiveauを認めた。腹部CTでは、腸管の拡張以外明らかな病変は認められなかった。保存的加療を試みるも胆汁性嘔吐、腹痛が改善されず、第4病日当科紹介入院となった。腹部の激痛や下血、アシドーシス等絞扼性イレウスを疑う所見は認めず、腹膜刺激症状、血液検査上の炎症所見はなかった。イレウスチューブを挿入し、病変部位検索のため注腸造影を施行したところ、回盲部末端より20cmの小腸に蟹爪状、腫瘤様の陰影欠損像を認めた。腸重積も否定できなかったが、整復は困難であった。開腹術の是非について意見が分かれたが、便通を認め、腹痛は許容範囲内であり、下血、アシドーシスもなく、イレウスチューブ挿入の効果を待つこととした。第6病日浣腸により便の排出を認め、Niveau消失、症状改善し軽快退院となった。開腹のタイミングについて迷った症例であり、提示する。