腹痛、タール便をきたし、原因不明の多発性空腸狭窄を認めた1例
近畿大学外科
吉田英樹、八木 誠、野瀬恵介、野上隆司、中村成宏、大柳治正

【症例】2歳、女児。主訴は腹痛、タール便。【現病歴】腹痛にて近医で急性腸炎として治療されていたが増悪、タール便も出現したため、他院入院となった。精査ではGIF、CFにて出血源を認めず、UGIにて空腸に多発性狭窄像を指摘、腹部CTにて狭窄部に一致した腸管壁肥厚を認めた。精査加療目的で当科転院となった。【経過】血液検査では軽度の貧血、炎症反応、低蛋白血症を認めた。血尿、蛋白尿なし。便中病原菌なし。ツ反陰性。腹部エコーでは腸重積像なし。メッケルシンチでは集積なし。空腸の狭窄所見に対してCrohn病の可能性を考え、腹腔鏡下に検索を行った。空腸は全体的に浮腫状で、一部漿膜面に脂肪滴状のものが数珠状に連なるのを認めた。腸間膜も浮腫状で多数のリンパ節腫脹を伴っていた。これら所見はCrohn病よりなんらかの感染を推察させた。高カロリー輸液を含む保存的治療にて症状は徐々に軽快し、空腸の狭窄像も改善した。