脾臓に被膜形成不全を伴った新生児特発性乳糜腹水の1例
関西医科大学外科、同小児科*
渡辺健太郎、浜田吉則、徳原克治、棚野晃秀、高田晃平、上山泰男、北村直行*、木下
洋*
保存的治療に抵抗した特発性乳糜腹水で、腫大し被膜形成不全を伴った脾の摘出を施行した症例を経験したので報告する。
症例は胎生25週より胎児腹水と診断されていた男児。緊急帝王切開にて35週3日、3,500gで出生し、Apgar
score 7/8であった。0生日に腹腔穿刺で500mlの漿液性腹水を吸引したが、その後も腹腔ドレーンから約80ml/日の排液が続いた。特発性乳糜腹水と診断し、絶食やMCTミルクによる保存的治療を継続したが、腹水量が減らないため44生日に腹腔鏡検査を施行した。乳糜漏出部位は確認できなかったが、脾臓は大きく表面に多数の被膜を欠く暗赤色結節を認めたため腹腔鏡下摘脾術を施行した。病理学的に脾臓は線維性被膜形成不全と診断されたがリンパ管腫の診断には至らなかった。術後MCTミルクの再開により腹水は減少し75生日に腹腔ドレーンを抜去した。その後は再度母乳栄養を行っても腹水貯留はなく、92生日に退院となった。