どうすることもできないのか?下大静脈欠損によるBudd-Chiari症候群の1例
近畿大学奈良病院小児外科 米倉竹夫、保木昌徳、小角卓也、大割 貢
同小児科 三崎泰志、吉林宗夫

患児は2歳女児。肝腫大を指摘され来院。発育は正常。黄疸、腹水はなく、弾性硬の肝を1横指触知。尿蛋白を認めたが、血液検査は異常なかった。超音波にて肝は一部分葉状を呈し、エコーレベルは軽度高値を示した。肝静脈は同定できず、門脈周囲に静脈瘤の形成を認めた。造影CT、MRI、MRAにて腎静脈尾側から肝静脈頭側までの下大静脈は欠損し、血流は奇静脈系へ流入していた。肝門部門脈に静脈瘤の形成を認めたが、脾腫や食道静脈瘤はなかった。肝静脈の還流は肝被膜から横隔膜静脈を介していた。経過中にSpO2の低下が出現、心臓カテーテル検査にてMAP51mmHgと肺高血圧と、圧較差56mmHgの大動脈縮窄症および右腎動脈狭小症を認めた。肝生検では鬱血は軽度で門脈周囲の線維化と中心静脈の狭小化を認めた。現在患児は在宅酸素療法にて経過観察中であるが、肺高血圧が現病による可能性も考えられ、治療に苦慮している。