胎児エコーにて右多発性嚢胞と正中巨大嚢胞が認められた一例−その診断と治療は?
近畿大学医学部奈良病院小児外科
保木昌徳、大割 貢、小角卓也、佐々木隆司、米倉竹夫

母親は28歳、妊娠歴は一妊一産。近医にて妊娠31週2日に羊水過多を指摘され当院産婦人科を受診。消化管奇形疑いとして31週3日当科胎児エコー外来紹介受診となる。胎児エコーでは羊水過多を認めた。頭・胸部に異常所見はなく、腹部では、右後腹膜腔から20mm前後の多嚢胞性病変を有する上下64×47mmのmassを認めかつ正常右腎を認めないことからこの病変はmulticystic dysplastic kidney(MCDK)と推測された。膀胱、左腎は正常であったが、膀胱より頭側正中腹壁側に5cm大のsingle cystic lesionを認めた。女児ということもあり胎児エコー上は、cloaca、水腟症、右尿管開口異常による右MCDKを疑った。胎児は羊水過多の進行と左腎水腎症出現のため在胎35週1日帝王切開にて娩出した。本症例の、診断、治療経過について報告する。