I-1 先天性食道閉鎖症術後6年目に発症した右胸壁膿瘍
愛仁会高槻病院小児外科
久松千恵子、岡本光正、尾藤 祐子、畠山 理、山本 哲郎

 症例は6歳男児。先天性食道閉鎖症に対して生後5日目に根治術を施行。術後MRSA敗血症、創離開、縫合不全、食道吻合部狭窄をきたしたが、抗生剤投与、創洗浄及び食道拡張術などの治療にて軽快し、以後は順調に経過していた。
 術後6年目に右側胸部に限局性腫脹が出現。腫脹は2cm大で圧痛を伴い、部位は食道閉鎖症根治術時の後縦隔ドレーン刺入部に一致していた。画像上胸壁膿瘍と診断し、抗生剤投与及び掻爬術を施行した。術後創部からの排膿が長期間続き、MRSAが検出された。膿瘍腔からの造影検査では肋骨に沿って胸腔内へ走行する瘻孔を認めた。連日の創内洗浄にて胸腔内の瘻孔は消失し膿瘍腔も縮小したため、再度掻爬術を行った。術中膿瘍内から3mm大の腐骨が摘出され、慢性骨髄炎が示唆された。
 なぜ術後6年目に膿瘍が出現したのか、また慢性骨髄炎に対して現在間欠的抗生剤投与を行っているがこの治療法でいいのか、御意見を伺いたい。

<二次抄録>
6歳男児。日齢5に気管食道瘻に対して一期的根治術を施行した。術後MRSA敗血症、縫合不全及び吻合部狭窄をきたしたが、抗生剤投与、創洗浄、食道拡張術にて軽快し、以後順調に経過していた。
 昨年、根治術時の後縦隔ドレーン刺入部に一致し圧痛を有する2cm大の腫瘤が出現した。画像検査上胸壁膿瘍と肺炎・胸膜炎の合併と診断し抗生剤投与と掻爬術を行ったが、術後創部からの排膿が1カ月以上続き、培養ではMRSAが検出された。再掻爬術にて膿瘍内から3mm大の腐骨が摘出され、慢性骨髄炎が示唆された。慢性骨髄炎に対し、肋骨切除による侵襲と機能障害を考慮し保存的治療を選択、間欠的抗生剤投与を開始した。現在胸壁膿瘍は治癒し、肺炎・胸膜炎も軽快している。
 慢性骨髄炎は増悪と寛解を繰り返す疾患である。本症例でも今後急性増悪や骨格変形により肋骨切除が必要となる可能性があり、その治療について本会で検討を行った。