1)顎下部側方皮下に発生した甲状舌管嚢胞
症例は3歳男児。生下時から左顎下部に1cm大の腫瘤あり、2歳ごろからの繰り返す腫瘤感染を主訴に平成18年10月14日当科紹介受診となった。初診時、顎下部左側方に1cm大の軟らかい皮下腫瘤を認めた。先天性嚢胞を疑い摘出手術を予定したが、摘出手術待機中に腫瘤が再度感染し、自潰して膿性分泌物とともにゼリー状の粘稠な分泌物が排出された。感染を保存的に治療したのち、12月26日に摘出術を施行した。嚢胞周囲を剥離していくと2mm径の瘻管が正中方向に向かい舌骨の前面に達し、頚部側方への瘻管は認めず、甲状舌管嚢胞と診断、手術は舌骨中央部を含めて瘻管を摘出した。摘出標本の病理組織検査では粘液産生を示す円柱上皮の存在する瘻管を認めた。甲状舌管嚢胞のまれな発生部位と考えられたため、若干の考察を加えて報告する。