9)新生児に認められた腹部腫瘤に対する緊急手術の適応判断は?
症例は, 日齢1の男児で, 在胎37週2日に予定帝王切開にて出生. 出生体重は2,710gでApgarは8 / 9であった. 出生後まもなくより呻吟を認め, さらに著明な代謝性アシドーシス (入院時:pH 7.188, A-ABE -21.4 mmol/L, HCO3 5.6 mmol/L, A-Lac 135.0 mg/dL) を認め, 精査加療目的にて当院NICUで入院管理となった. 入院時, 全身蒼白で呻吟, 多呼吸を認め, 左季肋下に弾性硬で可動性不良の腫瘤を触知した. 腹部超音波検査やMRI検査 (T2WI:高信号) では, 左腎上極に腎外性に5.2×3.8 cmの内部に大小の?胞構造を有する腫瘤を認め, 腫瘍と腎臓との境界にbeak signがあること, 背側に圧排された正常副腎が認められたことより, mesoblastic nephromaが示唆され, 本腫瘍では血流によりうっ血性心不全をきたすことが指摘されていた. メイロンを持続使用するも代謝性アシドーシスは全く改善されないものの, 全身状態をさらに改善させた後に待期手術を実施するのか, 術中死も覚悟して緊急手術を敢行するのか, 緊急時の治療方針に対し, ご意見を頂きたく症例を提示させていただく.