日本小腸移植研究会は「小腸移植に関する研究の向上をはかり、その臨床応用の普及」を目的として設立され、順天堂大学小児外科の宮野武教授を当番世話人として1988年に第1回研究会が開催されました。研究会自体の初代会長は宮野武先生 (1988-2008)に続いて、二代目福澤正洋大阪大学教授(2008-2012)、三代目田口智章九州大学教授(2012-2020)が就任され、2020年に四代目会長を奧山宏臣が拝命いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
1988年本研究会発足時は、まだ本邦での小腸移植は行われていませんでしたので、海外での移植経験や基礎研究の成果が発表され、小腸移植実施に向けた準備が始められました。1996年に本邦における小腸移植第1例目が実施されると、本研究会において全小腸移植症例が登録される仕組みが構築されました。2018年には本研究会が中心となって要望した小腸移植の保険適応が認められ、ようやく他臓器の移植手術と肩を並べることができました。このように本研究会は、本邦における小腸移植の推進・普及に大きな役割を担ってきました。
一方、世界の小腸移植レジストリーの登録結果をみますと、小腸移植の短期予後はかなり改善されてきましたが、長期予後はまだまだで、移植症例数自体ものび悩んでいるのが現状です。2000年代に入っての世界での大きな流れとしては、小腸移植の適応となる腸管不全に対しては、内科・外科的治療とともに、管理栄養士、看護師、薬剤師、MSWなどの多職種が連携したチーム医療である腸管リハビリテーションが標準治療となってきました。そして小腸移植は腸管リハビリテーションの一つの治療手段として位置付けられるようになりました。このような背景のもと、従来から国際的に小腸移植のリーダーシップを担ってきたInternational Symposium of Small Bowel Transplantation (ISBT)は、2017年よりInternational Congress of the Intestinal Rehabilitation and Transplant Association (CIRTA)という名称に変更されました。こうした海外での流れに呼応して、本研究会も2020年に日本腸管リハビリテーション・小腸移植研究会という名称に変更されました。
今後は、移植医療の関係者だけでなく、広く腸管リハビリテーションに関わる多くの職種の方々にご参加いただき、本邦における腸管不全の予後向上のための役割を担ってゆくことが本研究会の目標となります。関係者の皆様におかれましては、これまで以上に本研究会へのご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
大阪大学小児成育外科 教授
奧山 宏臣