理念・歴史

 大阪大学小児外科の歴史は昭和27年頃、同大学第一外科においてわが国小児外科のパイオニアである植田隆先生のヒルシュスプルング病の手術に始まります。昭和35年には当時最も困難とされていた食道閉鎖症手術において日大若林教授と同時期にわが国最初の成功を収めました。また、昭和41年に岡本英三先生(現兵庫医科大学名誉教授)が英国小児外科学会で発表されたヒルシュスプルング病における腸管壁内自律神経の発生起源に関する胎生学的研究は、今尚国際的に高く評価されています。そして昭和57年には、第一外科川島康生教授のご尽力により、診療科としての小児外科が誕生し、初代教授に岡田正先生が就任されました。岡田正教授のもとでは外科栄養を中心とした業績が積み重ねられ、平成元年には講座認可となり、教授以下スタッフ8名と全国でも有数の医局員を擁する教室に発展しました。平成15年6月には岡田正教授の後任として福澤正洋先生が2代目教授に就任され、小児がん、腸管不全、横隔膜ヘルニアといった難治性疾患の優れた臨床、基礎研究が行われてきました。そして平成26年7月には奥山宏臣が3代目教授に就任し、教室としても新たなスタートを切りました。大阪大学小児外科教室では発足当時より、新生児外科、小児固形悪性腫瘍、小児胆道疾患、腸管不全、外科栄養、肝・小腸移植を重点領域とした臨床研究が行われ、基礎研究と結びついた優れた業績をあげてきました。今後はこうした診療分野に加えて、内視鏡外科手術に代表される低侵襲治療、再生医療、胎児治療を積極的に導入したいと考えています。
 患者さんとそのご家族に信頼される質の高い小児外科診療を提供すること、その成果を広く世界に発信すること、そして次世代を担うリサーチマインドを持った小児外科医を育成することを目標として、診療・研究・教育に取り組んで参ります。